夜嵐の連れてきたりし秋の晴   石黒 賢一

夜嵐の連れてきたりし秋の晴   石黒 賢一

『合評会から』(三四郎句会)

正義 この頃の天気にぴったりじゃないかな。本当にこんな感じですよ。
論 前夜は大あらしで、朝になると、ぴたっと快晴になっていた。素晴らしい朝ですね。
而云 こういうことが今年多い。秋の空は変わり易いですから。
          *       *       *
 作者は「嵐の来た次の日に作りました。何も考えず、この通りの感じだったので、感じたままを句にしました」と合評会で述べている。
 「台風一過」という言い古された四字熟語がある。台風が過ぎ去った後の秋晴れの上天気を言うのだが、この句はそれを改めて言っているに過ぎないようにも見える。しかし、「連れて来たりし」という措辞によって、単なる四字熟語の説明から脱することができた。
 荒れ狂っていた嵐の夜が過ぎたら、なんとも平和で明るい上天気。それを「この秋晴れはあの嵐が連れてきたんだ」と捉えた。いわば逆転の発想である。これでウイットに富む句となった。(水)

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