二次会は思ひ出横丁月煌々    直井 正

二次会は思ひ出横丁月煌々    直井 正

『この一句』

 先日、JR新宿駅西口から西武新宿駅の方へ、下り坂の歩道を歩いていた時、「思い出横丁」の看板が目に入った。懐かしの飲み屋街を久しぶりに見学して、変わっていない、と思った。十年以上前に大きな火事があったはずだが、元通りに復元されている。昼間なのに賑わいは昔以上だったかも知れない。
 飲み会の二次会で「思い出横丁へ!」と繰り出すような人々は、少なくとも七十歳過ぎではないだろうか。あんまり無理は出来ないが、まだ余力を示すこともできる。もつ焼き店のカウンターにぎっしりと詰めて腰かけ、あの店のホルモン鍋がうまい、あそこのアジフライだよ、などと話がはずむ。
 昼間見た飲み屋横丁は明らかに外国人が増えていた。夜はどうだろうか。今は若いサラリーマンや学生よりも、作者のような“思い出族”が幅を利かせているのかも知れない。夜も更けて店を出て、空を仰げば「月煌々」とは、なかなかの雰囲気である。しかし句会後なら「月今宵」が似合うのではないだろうか。(恂)

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