黙といふ会話ありけり月今宵 広上 正市
『合評会から』
研士郎 しみじみと月を見て、二人は通じ合っている。余裕のあるいい句だ。
正 「黙(もだ)という会話」。これは詩情の世界ですね。とてもいい句です。
双歩 二人で月を見るのはありがちな景です。しかし、「黙」であっても二人の関係が成り立っているのですね。それによって味のある句になっている。
好夫 選ばなかったが、皆さんの意見を聞いているうちに、採ればよかったと思うようになった。
綾子 「黙」が強いので、「黙という会話」にちょっと抵抗感がありました。
水牛 「黙といふ会話」にやや作為が感じられます。俳句は作為を消した方がいいですね。
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黙「もだ」は万葉以来の読み方だそうで、現代の俳句にも用いられているのは素晴らしいことだ。しかし言葉遣いの要諦は適材適所。「黙」のような語のマイナス面も考える必要があるのではないだろうか。「沈黙」「無言」などもあるし、どんな語を選ぶかは難しいところである。(恂)
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