虫の音や古りし頭巾の六地蔵   高石 昌魚

虫の音や古りし頭巾の六地蔵   高石 昌魚

『この一句』

 句会では「とてもしっくりした調子のよい句だ」(双歩)、「六地蔵はどこにでもある。陰気くさくて私は好きではないが、虫の音には合っていますね」(好夫)といった句評が次々に出た。確かに虫の音と地蔵さんは「付き過ぎ」と言われるくらいぴったり合う。
 それに加えて「古りし頭巾の六地蔵」というのもよく出て来るフレーズだ。あの赤い頭巾や涎掛けが雨風にさらされて色褪せている風情が、何と取り合わせてもうまくくっつくから、句材としてこれほど有難いものは無い。
 というわけで、これまでにこれと同じような句がずいぶん詠まれているのだろうと思う。しかし、「どこかで見たような句だなあ」と思いながらも、自然に丸をつけて採ってしまう。日経俳句会九月例会でも高点を獲得した。
 誰もが共感を抱き、しみじみとした気分に浸る。何度も読み上げていると、なんとなくほっとした気持になる。そんな句なのだ。こういうのを「偉大なる月並句」と名づけたい。(水)

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