門柱に纏わる人形秋出水     大沢 反平

門柱に纏わる人形秋出水     大沢 反平

『この一句』

 「纏わる」は「まとわる」「まつわる」両様の読みがあるが、どちらも同じ「巻きつく」「絡みつく」の意味である。秋出水によって、この家は床上浸水になったのだろう。侵入した水は家の中のものを外へ流したが、人形は家に未練があるようだ。何とか留まろうと門柱に絡みついて離れようとしない。
 作者はおそらく、このような場面をテレビで見たのだろう。門柱に何かが絡みついていた。人形でも、動物のぬいぐるみでも、持ち主の気持ちを思えば、何とも切ない情景である。水害に遭ったすべて家々に家族の生活があった。たとえ家は残ったにしても、二度と元に戻らないものがたくさんある。
 人形の持ち主は幼児だろう。自分の分身のように可愛がっていたのかも知れない。避難所で寝た一夜に、人形のことを思い出していたのだろうか・・・。この一句によって生じた思いは際限なく広がって行く。このたび大被害を受けた常総市周辺には、またも大雨の予報がある。天の神様、不公平ではないか。(恂)

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