忍び足猫の一歩や秋の声     宇野木敦子

忍び足猫の一歩や秋の声     宇野木敦子

『この一句』

 猫ブームだというが、昔に比べると猫そのものが変わってきている。テレビのアマ動画に投稿される猫は毛がふわふわしているような、いかにもペット風が幅を利かせている。しかし、この句の猫は違うかも知れない。道で拾ってきて育てたような、そんな懐かしい猫の雰囲気が感じられる。
 なにしろ虎や豹などと同じネコ科なのだ。夜、人気のない場所などでは猫特有の動きを見せることがある。身を低くし、一歩、一歩、静かに足を運んで行くのだ。前足の一方を床につける直前で留め、前方をじっと見つめ、固まったかのように動かないこともある。そのような状況の中から、秋の声が・・・。
 忍び足の猫は板の間の隅にコオロギでも見つけたのではないか。捕まえ食べても、キャットフードより美味しくないだろう。しかし野生の本能が甦れば、動くものを狙わざるを得ない。作者はそのような緊迫感の中に秋の雰囲気を感じたのだろう。とてもユニークで、興味深い「秋の声」の句だと思う。(恂)

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