木漏れ日に苔むす古刹秋の声      渡邉 信

木漏れ日に苔むす古刹秋の声       渡邉 信

『合評会から』(三四郎句会)

敦子 京都のお寺でしょうか。句の通りの情景が目に浮かんできます。
論 有名なお寺でしょうね。静寂の風景の中から秋の声、ですね。
照芳 旅行で訪れた寺や神社の静かな様子を思い出しました。
正義 苔寺(西芳寺)かな。どこからともなく秋の雰囲気が漂ってくるという情景ですね。
恂之介 いかにも秋の声が聞こえてくるような、典型的な風景ですね。それだけに類想の句があるかも知れないけれど、やはりいい雰囲気です。
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 昔、西芳寺に枯山水の庭があった。ところが戦争や自然災害で何度か荒廃を繰り返した後の江戸後期、見捨てられていた庭が苔で覆われていたのだという。庭に小さな流れがあり、木漏れ日が適当に降り注ぐ。苔寺はそんな条件によって自然に出来上がった。苔むす庭を見て「いいな」と思うのは、苔の風景が日本の自然そのものであるからだろう。秋の声も当然、聞こえてくるはずである。(恂)

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