少年もボケはじめけり終戦日   大石 柏人

少年もボケはじめけり終戦日   大石 柏人

『この一句』

 あれからもう七十年たつのだ。当時の中学生はもう八十代半ばである。「ボケはじめけり」ならまだいい方で、訳が分からなくなっている人も多い。
 年寄りには一目でぴんとくる句だ。しかし、戦争はもちろん戦後の混乱期すら知らない団塊世代以降だと少々戸惑う。それは、「少年もボケはじめけり」といきなり言われても、咄嗟には何のことかと思うのだ。「神国」「大東亜戦争」「一憶一心火の玉だ」「八紘一宇」「鬼畜米英」などという言葉は、本で読んだり両親や祖父母から聞いたりしてはいても、肌身で感じているわけではない。
 しかしこの句の「少年」はこれを物心つくかつかないかから叩き込まれていた少年なのである。戦中派なら何ということもない叙述も、既に説明なしには理解されない。「七十年」というのは、やはり大昔なのである。
 若者にも解るように詠もうとすると、結構難しい作業になる。字余りだが、ここは「軍国少年ボケはじめけり終戦日」か。しかしそれだと原句の歯切れの良さを失う。日本を大きく変えたこの大戦を俳句にするのは意義のあることだが、実に難しい。(水)

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