養老の母臥す床に西日射る       鈴木 好夫

養老の母臥す床に西日射る       鈴木 好夫

『季のことば』

 一年中、存在するのに季語になっているものがある。西日がその一つ。夕方になれば季節に関係なく差して来るのに夏の季語なのだ。歳時記によると「天文」の夏では、他に夕立、御来光、虹、雷、朝曇、朝焼、夕焼など。「生活」「動物」「植物」の項になると数え切れないほどである。
 「植物」の胡瓜、茄子、トマトの類も現在は一年中あるのだが、かつては夏に収穫され、その時期に食されており、それなりの季節感を持つと言えよう。一方、「天文」の類はいかにも夏らしい、という認識によるものらしい。特に西日は人をげんなりさせる暑苦しさがあり、堂々たる夏の季語である。
 上掲句の「養老」。やや珍しい表現だが、「老人を大切にする」という意味があり、作者の思いの一端をうかがえる。母上は寝た切りなのかも知れない。その寝所に西日が届いてきたのだ。「射す」ではなく「射る」とある。きつい語だと思うが、ここにも作者の気持ちが表れているのだろうか。(恂)

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