バス降りてふる里匂ふ青田かな   河村 有弘

バス降りてふる里匂ふ青田かな   河村 有弘

『合評会から』(三四郎句会)

正義 一日にバスが一、二本、停留所の周りは青田。まさに懐かしい田舎。
尚弘 タクシーではなくバスの帰郷というのがいいな。
照芳 「ふる里匂ふ」が特にいいですね。
敦子 故郷の匂いと青田が合っています。
豊生 敗戦後、満州から高松に引き揚げてきた時の一面の青田が忘れられません。お米の基が、この青々とした田にあるんだなと。あの頃は木炭バスでしてね、この句から思うことがたくさんありました。
進 私が思い出すのは疎開していた頃の青田風景です。
          *     *     *
 「匂い」は嗅覚だけではなく、古来、情趣、雰囲気、気分が漂うことも「匂ふ」と言った。俳諧では殊に「匂」は重んじられ、前句の趣に添わせて詠むのを「匂付(においづけ)」と言い、良い付け方とした。この句もまさに伝統的な「匂ふ」であろう。一面に広がる青田を渡る薫風。都会暮らしの塵埃が一瞬に吹き払われ、故郷の雰囲気に浸ったのだ。(水)

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