紫陽花や移ろふ藍の今淡し   久保田 操

紫陽花や移ろふ藍の今淡し   久保田 操

『季のことば』

 梅雨の花と言えばアジサイ。「あの寺もこの寺もまたあぢさゐ寺 涸魚」というように、今やどこもかしこも紫陽花だらけである。紫陽花は日本固有の植物なのだが、昭和も戦前まではこれほど流行らなかった。「七変化」という別名があるように、色を次々に変えてゆくため、「変節」を軽蔑する日本人の気性に合わなかったからだとの説がある。それがかくも持て囃されるようになったのは、日本人も変化したということか。
 咲き始めは黄緑色で、数日で緑が薄れ白になり、そして青またはピンクに発色する。青は濃くなって藍になり、ピンクは赤または紅になる。やがて藍も赤も紫がかって、しまいにそれが色褪せてしおれて来る・・。実際には七回も変わることはなく、藍色の期間が長く、これが紫陽花の盛りの色である。
 作者は紫陽花の色の変化を見つめている。自宅の植え込みか、近くの公園か。四六時中紫陽花が目に入るのであろう。藍色も今や淡々としてきたと言う。もう盛りを過ぎたのだという哀歓を表に、そして、いよいよ梅雨明けも近いという期待感を裏に添わせている。(水)

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