老農の小手かざし見る青田かな      深瀬 久敬

老農の小手かざし見る青田かな      深瀬 久敬

『合評会から』(三四郎句会)

正義 農家のお爺さんが、我が家の田んぼの様子はどうかな、と立ち止まって見渡している。仕事を終えて一息ついたときか、田んぼからの帰りがけか。ともかくこれは夕方の風景でしょう。
有弘 青田に相応しい、いちばん素直な田園風景です。
恂之介 小手をかざす、というクラシックなしぐさが、青田には合うんですね。
信 まさにその通りです。私の育った福島の田舎の風景を思い出しました。
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 かつて田んぼの中の小高い場所に、よく墓が作られていた。亡くなった後も田んぼを眺めていたいという、農民の気持ちに適うものとされている。法律や農地の大規模化によって、そんな墓地は消えていく一方だが、老農が小手をかざして見るという風景は永遠であるはずだ。「青田」が句会の兼題であった。ドローンを詠んだ当欄前句とこの句。全く対照的な二作のどちらに点が多く入るか興味を持って見ていたが、結果は3対2で「老農」の勝ち。伝統的な題材の強みというものがあるのだろう。(恂)

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