扇子買う写楽北斎見比べて       須藤 光迷

扇子買う写楽北斎見比べて       須藤 光迷

『季のことば』

 今どき、自分で扇子を買うのは和式の仕事や趣味を持つ人ではないだろうか。日本舞踊、謡曲、茶道、華道、落語、囲碁、将棋・・・。挙げればきりがないが、実際にやっている人は一割くらいのものか。しかし和服好きなら男女に限らず扇子を持っているはずだし、というようなことを、句会で考えていた。
 しかし写楽や北斎の扇とは? 東京・両国の江戸東京博物館とか上野の下町風俗資料館あたりの売店なら売っていそうな気がするが、上記のようなプロや趣味を持つ人たちが、浮世絵の扇を自分で購入し、持ち歩くとは思えない。作者に聞いてみたら「外国人へのプレゼントですよ」とのこと。
 種明かしをされ「参りました」と言いたくなった。頭に描いていた昔風の世界が、一瞬にして今どきの世情に変わってしまったのだ。原宿の店で手に入れたそうである。ならば、写楽と北斎のどちらを? 蛇足気味の質問には「両方買いました」の答え。句の調子のよさに、最後まで乗せられていた。(恂)

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