天と地に風ものどかな農作業       吉田 正義

天と地に風ものどかな農作業       吉田 正義

『この一句』

 風を「のどか(長閑)」と捉えた句は珍しい。句会(NPO双牛舎総会句会)の兼題だったから、このように詠んだのかも知れないが、柔らかな、心地よい風が感じられ、ごく自然に受け取ることが出来た。農作業の中、天と地に二つの風が吹いている、という状況もうなずけるのではないだろうか。
 春とはいえ農作業なら当然、汗をかく。いい風が来た、と感じるのはもちろん、体のあたりを吹いていく風である。襟元を緩めて風を入れ、ここらでちょっとひと休みと、腰を伸ばして空を眺めたら、雲がゆっくりと流れていたのだろう。春の農作業のほんのひと時を、感じよくとらえていると思う。
 作者は「花冷えも百穀の春雲間より」という句も出していた。百穀とはいろいろな穀物のこと。花冷えの時期、雲間の青空に農業の季節の到来を感じたのだろう。ただし忙しい仕事を持つ作者が趣味の農業をやっているとは思えない。祖父の頃の生活を、遥かに思いやった句ではないか、と推察した。(恂)

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