東風に立つ会場案内仏頂面   鈴木 好夫

東風に立つ会場案内仏頂面   鈴木 好夫

『季のことば』

 昨日に引き続き「東風」。東風は菅原道真の歌で梅との結びつきが強くなりすぎ、早春の風というイメージだが、実は二月から四月まで通して吹く東寄りの風を言う。従って、季語としても「梅東風」の早春から、「桜東風」「鰆東風」の中春晩春、そして初夏の声を聞く頃に盛んに獲れ始める鰤の若魚イナダを招く「いなだ東風」に至るまで、三春に通用するものとされている。
 この句の東風は二月から三月初旬の東風であろう。東風と言っても東北方から吹きつけ、かなり強くて冷たい風だ。そんな吹きさらしの中に立っての会場案内は辛い。これは企業の新製品内覧会とかお得意様招待の特別頒布会といった催しの道案内だろうか。それとも通夜か告別式の会場案内役だろうか。イベント会場や葬儀場というのは大概風のよく通る所にあるのだ。
 いずれにせよこの会場案内は自ら買って出たものではなく、上司に命じられたか、くじ運が悪かったかであろう。「仏頂面」という言葉を放り出すように置いたところが特殊効果を生んで、実に面白い。(水)

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