春めくや仏微笑むみちのく展      野田 冷峰

春めくや仏微笑むみちのく展      野田 冷峰

『この一句』

 開催中の「みちのくの仏像」展(東京国立博物館)を見て、「微笑仏」の原点に接した気がした。何体かの仏は明らかに微笑していた。微笑仏とは一般に江戸後期に諸国を巡った木食行道作の仏像を言うが、木食仏の先には江戸前期の円空仏があり、さらにその先に、平安時代以来のみちのくの仏があるのだろう。
 会場には三体の円空仏があって、他の仏像を上回る観客を集めていた。円空の最も初期の独特の荒々しい鉈彫りには至らぬ、丁寧な鑿(のみ)跡を残す作である。円空はほぼ一生と言えるほどの歳月を諸国行脚に費やしたが、東北地方の仏たちに出会い、仏師への道を歩み出したのかも知れない。
 春めいたと思えば、すぐに真冬に逆戻り。まるで「早春賦」のような気象状況が続くが、みちのく展には早春の風が流れているようであった。句の作者は言う。「みちのくの仏さんには奈良・京都の仏像にないやさしさがあった」。彼はこの仏たちに微笑を見つけ、春めく頃の雰囲気を感じ取ったのである。(恂)

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