指先を余寒ちりりとかすめけり   山口 斗詩子

指先を余寒ちりりとかすめけり   山口 斗詩子

『季のことば』

 「余寒」とは、立春を過ぎて暦の上では春になったのに、まだ寒さが残っている気分を言う初春の季語である。「春だというのに何という寒さ」といった感じを前面に押し出す言葉でもあり、「寒いけれど、やはり春だなあ」という気持を述べることにも使う。「残る寒さ」とも言い、まさに今、二月にぴったりの俳語だ。
 「春が来たけれど、まだ鋭く尖った感じのものがある、そういう時期をうまく詠んでいます」(光迷)。「指先、ちりり、かすめる、と詠んだところが春先の微妙な感じをよく表しています」(可升)。「指先は神経が鋭くて、寒暖もよく感じる。『ちりりとかすめけり』は指先だからこそなんですね」(冷峰)。句会の合評会で出た感想だが、この句の良いところを適確に言い当てている。
 「寒」という文字につられて、冬の季語と取り違えそうになるが、ちりりと指先をかすめるほどの寒さなのだ。「寒い、寒い」とは言っても、もう春なのである。(水)

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