煮詰まりし白菜残る一人鍋   山口 斗詩子

煮詰まりし白菜残る一人鍋   山口 斗詩子

『この一句』

 「一人鍋」というものが流行っている。男も女も適齢期になってもなかなか結婚しない。都会では独身生活を続けている若者、中年にさしかかった男女がとても多い。スーパーやコンビニ、それにデパートの地下食品売場では、そうした人達向けの「個食」を沢山並べている。「一人鍋」もそのうちの一つだ。
 「一人鍋」のもう一方の有力顧客が高齢一人暮らし。これまた激増している。この句はそちらの方である。「煮詰まった白菜」がそういう感じを伝える。
 鍋物に欠かせない白菜。どんな鍋物にも合い、とても美味い。煮えばなのしゃきしゃきしたのもいいし、柔らかく鍋の味が染みたのも旨い。しかし、煮詰まって鍋の底にへばりついたようなのは困る。見た目にも情けない感じである。
 この句は誰もが目にしながら気にも止めないことを切り取って、侘びしさを浮彫にした。あくまでも優しい物言いの中に、一人鍋の哀感をこれ以上厳しく表した句はそうそう無い。(水)

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