墓洗う妻の手荷物持ちにけり     鈴木 好夫

墓洗う妻の手荷物持ちにけり     鈴木 好夫

『この一句』

 墓を洗うのは概ね、なかなかの労働である。夫が「この辺でいいだろう」と止めても、まだ汚れが残っていたのだろう。そこで妻が作業を引き継ぎ、夫は妻のバッグなどを持たされている――という風景を、初めに思い描いた。しかし不精な夫は墓参の仕事を、初めから妻に任せていたのかも知れない。
 妻は墓前に立つや荷物、持参の花などを「はい」と夫に手渡す。夫は当然のようにそれらを受け取り、妻にすべてを託してしまう。テキパキと動く妻、その見事な働きぶりを見ているだけの夫。作者ご夫妻を知っている一人として、どうやらこちらの方が正解かな、と思われてきた。
 先日の彼岸の中日(9月23日)、関東周辺の寺や霊園はいつもより墓参の人が多かったという。天候不順の頃、予報では晴れとなっており、「この日」と決めていた人が多かったようだ。私(筆者)もこの句のような情景に接し、作者ご夫妻の様子を思い浮かべた。墓参風景は実に多彩、一家の縮図でもある。(恂)

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