戻る家なき生国の墓洗ふ       広上 正市

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『合評会から』(日経俳句会)

昌魚 もう自分の住む家はない、しかし墓参りの時だけは故郷に帰らなければならない。こういう人が多くなっているのだろう、と思いながら選びました。
実千代 これは男の人の句でしょう。「女三界に家なし」とは違う雰囲気です。地方に生まれ育って、東京へ出て行って、墓参りには帰る。たいへんだなぁ、と思います。
大倉 実家がなくて、先祖代々の墓だけがある、というのでしょう。その墓を洗い、拝む。寂しい、空しいという感じでしょうか。
啓明 やはり一抹の寂しさを感じました。「墓洗ふ家系に一人残されて(反平)」という句もありました。同じような立場の人が多いと思います。
正市(作者) これ、俳句というより、事実なんです。
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 「故郷」とはせず、「生国」とした。そこに作者の何らかの気持ちが込められているような気がする。(恂)

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