ひょいと首伸ばす白鷺稲の秋   堤 てる夫

ひょいと首伸ばす白鷺稲の秋   堤 てる夫

『この一句』

 黄色く実った稲穂が重そうに垂れる稲田。遠くから眺めると見渡す限り黄金色に輝いている。これぞ大昔からの日本の秋の風景である。そこに白鷺を据え、焦点定まった色彩鮮やかな句が生まれた。
 こういう句はごみごみした町中で、部屋に閉じこもって頭の中でこねくり回していたのでは出来っこない。実際に見た強さが感じられる。その証拠が「ひょいと首伸ばす」という白鷺の動作を活写したところにある。獲物を見つけた白鷺は、S字形に縮めていた首を瞬時に延ばし、長く鋭いくちばしで獲物を捕らえる。あるいは外敵など不穏な空気を感じ取った時に、茂みからひょいと首筋を伸ばし、周囲をうかがう。どちらにせよ、サギの首筋の伸縮自在なること感嘆すべきところがある。作者はそれを巧まずに、見たままを詠んだ。
 白鷺は夏場に鷺山(コロニー)を作って雛を育てる。その景観と啼き騒ぐ様子が強烈な印象を与えるので、夏の季語になっている。しかし、実際は一年中活動しており、特にこの句の場合は稲の秋の一景物。よもや「季重ね」などと見当違いを言う人はいないと思うが、あえて一言。(水)

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