鈴生りの柿の木の庭荒れにけり   田中 白山

鈴生りの柿の木の庭荒れにけり   田中 白山

『季のことば』

 柿は中国大陸原産の植物とされているが、日本でも奈良時代、いやそのずっと前から植栽され、その後品種改良が繰り返されて立派な実をつける優良品種が数々生まれた。幕末明治時代に来日した欧米人が「こんな旨い果物があったのか」と驚き、持ち帰り栽培するようになった。「KAKI」という名前も世界中に広まり、日本の果物というイメージが定着した。
 柿はよほど日本の気候風土に合った果樹なのだろう、植えっぱなしでも、自然に花を咲かせ、実をつける。昔はどこの家も庭に柿を植えた。秋も深まるにつれ、柿が朱色に色づき、真っ青な空に映える。渡って来た小鳥たちが、それをついばむ。日本の秋を表す代表的な景色になっていた。
 しかし、時移り柿には気の毒な事態が生じた。田舎は過疎化で折角の柿をもぐ人がいない。都会でも老人家族が施設入りしたり、死亡したりで無住家屋が増え、残った柿はただただ実るだけ。鴉も食べ飽きてカアと飛び去るばかり。(水)

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