草原は日光キスゲ大入日   前島 厳水

草原は日光キスゲ大入日   前島 厳水

『季のことば』

 ニッコウキスゲ(日光黄菅)は本州中部から北海道にかけての高原地帯の夏に咲くユリ科の植物。日光の霧降高原や尾瀬、霧ヶ峰の群落が有名で天然記念物になっている。6月中旬から7月一杯、所によっては8月半ばまで見られる。
 草原、湿原にオレンジ色がかったユリのような花が一斉に開く様子は目を奪われる。句会では「日光キスゲと大入日で、絵のような景が浮かんできます」(正裕)という評があった。まさにその通り、蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」の名句に相通じるような、雄大な景色が浮かんで来る。
 作者によると、これは霧ヶ峰だという。ここの湿原地帯は植物の宝庫で、ことにニッコウキスゲの群落は素晴らしい。諏訪に生まれ育った作者にとっては子どもの頃から見慣れた景色なのだ。真っ赤な太陽が稜線の向こうに沈む頃、一日花のニッコウキスゲは名残のオレンジ色の輝きを一層際立たせ、しぼんで行く。その脇には明日の朝開く莟が緑の茎の上に顔のぞかせている。こうしてニッコウキスゲは朝咲いて夕にしぼむことを繰り返しながら、高原の短い夏を彩り続ける。(水)

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