菖蒲園花の高さの車椅子        田中 白山

菖蒲園花の高さの車椅子        田中 白山

『この一句』

 菖蒲園に車椅子の人が菖蒲を見にきた。場所柄、人が後ろから押しているのだろう。一組だけか、どこかの施設から何組もいっしょに来たのか。句の雰囲気から、何組もが池の中の八橋(やつはし)を渡っていくのだ、と想像した。作者は少し離れたところから、その行列を見ているのである。
 八橋は京都の菓子の名として知られるが、一説に伊勢物語に出てくるカキツバタの名所の橋だという。何枚かの板をずらしながら渡して行く見物用の橋で、今では菖蒲園の風物となった。そこを車椅子の列が渡って行く。押す人の胸から上が見える。車椅子の人の頭が見え隠れしている。
 車椅子の人と菖蒲の花が同じ高さであることを、作者は発見した。それだけのことを言った句だが、菖蒲見物のことを考えさせてくれた。車椅子を押す人は菖蒲の群生を上方から眺めている。車椅子の人は花を真横から見ているのだ。菖蒲田の全景を見下ろせるような場所があるのかな、と思った。(恂)

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