赤い傘小さくなりゆく梅雨の中   流合研士郎

赤い傘小さくなりゆく梅雨の中   流合研士郎

『この一句』

 映画のラストシーンでも見ているような句である。暮れ方であろうか。しとしとと朝からの雨がまだ降り止まない。太陽は梅雨雲に隠されてしまっているが、まだ西の空に残っている頃合いだから、薄暗いとはいっても、かなり遠く迄見通せる。そんな一本道を赤い傘がだんだん遠ざかって行くという。
 この句はただそれだけを述べているに過ぎない。感情表現を消し去った、典型的写生句と言う人がいるかも知れない。いや、写生ではなく、極めて叙情的なポップス調だという意見も出て来そうだ。つまり、写生そのものに見えて、実は心情を吐露した句というのだ。
 確かに、描かれた情景から、この句には作者の置かれた状況や心情が裏打ちされていることが容易に想像できる。このように、あまりにも素っ気なく、情景描写だけぽんと提出されると、読まされた方はいろいろ考え始める。そして例えば、これは別れの場面なのだと推察すれば、次から次へと想像が広がって、読者自身が物語を創作してゆく。下手すると演歌やシャンソンのようになってしまうが、面白い作り方である。(水)

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