町名に上と下あり祭来る   岡本 崇

町名に上と下あり祭来る   岡本 崇

『この一句』

 「なるほどなあ」と唸った。なんともうまいこと詠んだものだと感心した。私の住まいは横浜の「みつざわしもちょう」、西へ向かって中町、上町と続く。町名に「上」「下」がつくのは全国各地にたくさんある。それがどうしたと言われるかもしれないが、こういうことに改めて気付かされるのが「祭」なのである。
 東京や横浜など大都会の町は、住民の出入り激しく、古い商店街は近郊に次々生まれる大商業施設に客を奪われ寂れてゆく。「わが町」の存在感は年々薄まるばかりだ。それが年に一度の夏祭になると、息を吹き返す。酒屋のオヤジも魚屋のババも曲がった背中や腰を伸ばして、半被を着込んで若返り、祭で里帰りしてきた孫たちを先導して山車を引いたりする。神輿はさすがに他所からの助っ人を頼まないとおぼつかなくなっているが、それでも威勢良く各町内を練る。カミチョウ、シモチョウが意地の張り合いをしたりもする。
 この日ばかりはシャッターが下りていた元荒物屋が開いて祭の会所になり、ご近所寄り集まって冷や酒、渋茶で久しぶりの縁台話に花が咲く。(水)

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