ほととぎす門田の苗の青青と   水口 弥生

ほととぎす門田の苗の青青と   水口 弥生

『季のことば』

 早いのは四月、大方は五月中旬に南方から飛んできて、主として高原地帯で夏を過ごし、涼しくなるとまた南国に帰って行く渡り鳥(夏鳥)。古来、春の「花」、秋の「月」、冬の「雪」と共に夏は「時鳥」と、四季それぞれの代表選手が決まっており、歌人たるもの夏が近づけば何とかして時鳥を詠まなければと意気込んだ。俳諧・俳句にもそれが伝わって、時鳥の句は掃いて捨てるほどある。
 昼も鳴くが、夜中から明け方にかけて鳴きながら空を横切って行くのが特徴で、だから、昔の人達は卯月(旧暦四月、現在の五月)ともなると、初音を聞き漏らすまいと徹夜した。また、時鳥は田植えを督促するために鳴くと思われてもいた。農業と深い関係のある鳥で、勧農鳥、田長鳥などとも書かれた。
 この句はそうした伝統を踏まえて詠んでいる。門田とは文字通り門の前の田、屋敷地の続きに広がる田圃で、その農家の看板とも言うべき最も重要な田である。丹精込めて植えた早苗が風にそよぎ、時鳥が豊作を約束するかのようにけたたましい声を張り上げて飛んで行ったという。清々しく気持の良い句ではないか。(水)

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