若葉光鑑真和上の麻衣         高瀬 大虫

若葉光鑑真和上の麻衣         高瀬 大虫

『この一句』

 俳句をやる人なら芭蕉の句「若葉して御めの雫ぬぐはばや」の本歌取りであることがすぐに分かるだろう。作者は僧籍を持つ人である。若葉の季節を迎え、鑑真和上に私もご挨拶申し上げます、と詠んだのだ。粗末な麻の衣もこの時期は涼しく、快適でしょう、という気持ちが込められている。
 句会の後、私はあるテレビのドキュメンタリー番組を思い出した。唐招提寺の鑑真和上像の制作過程を追ったものである。和上を尊敬・崇拝する弟子たちが大往生の前から、生き写し像を残そうと制作を始めた。和上が実際に着ていた麻衣も乾漆像に被せた、というような内容であった。
 作者に確かめたところ、テレビ番組は見ていなかった。僧侶はこの時期、袈裟の下に麻衣を着るので、今は心地よく過ごされているでしょう、と一句を詠んだそうである。この句は句会で一票を得た。選んだ人は僧籍にある女性であった。彼女も、そのように思います、と挨拶を捧げたのだろう。(恂)

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