犬連れのいつもの仲間夕薄暑   田中 白山

犬連れのいつもの仲間夕薄暑   田中 白山

『季のことば』

 五月初旬の立夏から下旬まで、いかにも夏らしくなったなと感じはするものの、まだうんざりするような暑さではない頃合いを「薄暑」と言う。十月の爽秋と、この薄暑の頃が一年中で最も気分がいい。もちろん、犬の散歩にも最高の季節である。
 犬はとても暑がりだ。汗腺が無いから、人間のように汗をかいて体熱を発散することができず、炎天をちょっと遠道すると長い舌を出してはあはああえぎ、時には木蔭にへたり込んだりする。都会では小径まで舗装してあり、夏場はそれが熱くなっているから、素足の犬には酷なのだ。
 しかし、薄暑の夕方は天国である。勝手知ったるいつもの道を、嬉しそうに歩く。そういう犬と人間が幾組もあって、いつの間にか顔見知りになっている。犬同士がふんふん嗅ぎ合って挨拶を交わしていると、双方の飼主も世間話を始めたりする。だが深刻な話題や長話はしない。犬同士の交歓が終わって「じゃぁね」といった感じで離れるのをしおに、飼主も左右に分かれて行く。世は事も無しといった風情である。(水)

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