蟻の巣の開門記念角砂糖   澤井 二堂

蟻の巣の開門記念角砂糖   澤井 二堂

『季のことば』

 むかし、「コドモノクニ」という児童向けの絵画雑誌があった。大判多色刷りの豪華絵本で、童話・童謡作家のお伽噺や歌に一流画家が自由奔放、きらびやかな、夢の溢れる絵を描いていた。子ども向けの童話、童謡、童画なのだが、大人も楽しめる奥の深い雑誌だった。戦争へまっしぐらにのめり込む中もこの平和の象徴のような雑誌は頑張っていたのだが、真珠湾攻撃の昭和16年だったか、ついに姿を消した。子供心に実に淋しい思いをしたものである。
 この句を見た時に、なぜだか突然目の前に「コドモノクニ」が浮かんだ。絵本の中にたくさんの蟻がぞろぞろと列を作って行進したり、角砂糖をかついだところが描かれていたのかどうか、もちろんそんなはっきりした記憶があるわけではないのだが、とにかくこの句から「コドモノクニ」のページをめくっているような感じを受けた。
 3月初旬の「啓蟄」以降、蟻をはじめいろいろな虫が冬籠もりの巣穴から這い出して来る。その開門記念に角砂糖をプレゼントしてやったのだという。この作者の眼と心は澄み切っている。(水)

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