行く春やまだ眠たげな空残し   片野 涸魚

行く春やまだ眠たげな空残し   片野 涸魚

『季のことば』

 今年は昨五月五日が「立夏」だった。いつものことながら春はあれよという間に去ってしまった。とは言え、この季節の変わり目は暦通りにはっきりとは割り切れない。八月初めの夏と秋との分かれ目が典型的で、立秋以後の方が気温が高くなってしまう。春と夏との境もまたはっきりしない。急に25℃を超えたと思ったら15℃くらいに下がって、立夏早々、夏風邪にやられたりする。
 空模様がまた猫の目変わりである。いきなり初夏の真っ青な空が続くというわけにはいかない。PM2・5が飛来したのか、ぼんやりと霞がかかって、眠気を誘う。まさに春眠暁を知らずが尾を引いている。花粉症が抜けきらないことも影響しているのかも知れない。
 この句はそういう行く春の風景、雰囲気を詠んでいる。「まだ眠たげな空」を残しているとは言い得て妙である。精一杯身体を伸ばして活発に、とは行かない気分をよく表している。ただ、そんなことを言ってぐずぐずしていると、行く春どころか初夏も瞬く間に過ぎ、鬱陶しい梅雨がやって来てしまう。(水)

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