白波の遠くに見ゆる潮干かな    後藤 尚弘

白波の遠くに見ゆる潮干かな    後藤 尚弘

『この一句』

 何年か前、JR・海浜幕張駅に降りて呆然とした。連れの人によると、そのあたりは昔の潮干狩の場所だったという。六十年以上も前の記憶と現状は、原始時代と未来と言えるほどの隔たりがあった。私はここで浅蜊をたくさん採って、自宅(東京)に持ち帰り、母親から誉められたこともあった。
 幕張、稲毛の潮干狩には何度も行っているので、干潟の広さを今もありありと思い出すことができる。黒々とした砂浜が延々と続いていた。風の強い日は句のように、遥か彼方に白波が立っていた。潮が上がり出すと、友人の借りたボートに貝などを載せ、何百辰皹砲ながら帰った記憶もある。
 だから、この句を見た時は実に懐かしい思いがした。干潟の沖に白波の立つことはもちろん今でもあるし、作者が最近、実際に見た風景なのかもしれない。しかし私は、戦後間もない頃の潮干狩を詠んだのだ、と勝手に決め込んだ。こうして私の心の中に新たな一枚の「名画」が生まれた。(恂)

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