人混みに独りと思ふ花の下   吉野 光久

人混みに独りと思ふ花の下   吉野 光久

『合評会から』(双牛舎俳句大会)

啓明 群衆の中の孤独、というのはありきたりの内容だと思いましたが、鮮やかに句に仕立て上げた語り口に脱帽しました。言えそうで言えない表現です。
厳水 花見の人混みの中の孤独感を通じて現代人の孤独をも表現している。
正 花見客には団体で来て騒ぐのが多い。独りで静かに桜を鑑賞したいと思っている作者の心境は孤独感そのものである。
操 雑踏のなかの孤独、よく言われることですが、桜の下で感じる「独り」は、より孤独で重いです。
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 第六回双牛舎俳句大会でたくさんの票を集め「地」賞を射止めた。「類句あり」という声もあったのだが、あらためてじっくり反芻してみると、やはりこの句は多くの人が花の下で抱く想いを言い当てている。誰もが感じることをこうしてそのまま詠む。よしんばそれが、先人の詠んだものと似通っていようと、それはもう問題ではない。百千の画家が富士山を描くのと同じである。(水)

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