ミャンマーや痩せた仔猫の擦り寄りぬ     井上 啓一

ミャンマーや痩せた仔猫の擦り寄りぬ     井上 啓一

『季のことば』

 「猫の恋」は江戸時代、芭蕉らによって詠まれて以来、長らく人気季語の一角を占めてきた。ところが恋の結果に誕生する「猫の子(仔猫)」は敬遠されがちで、句会の兼題になることはめったにない。ならば、と番町喜楽会の兼題にしたところ、現代の猫世界を表すような句がたくさん登場した。
 いま日本の都会では野良猫の生息できる環境は狭まる一方で、仔猫を見ようとすれば、ペットショップや各地の「猫の島」などに出かけていくようなことになる。糞害などによって衛生面でも問題が多く、野良猫に避妊・去勢手術をほどこす例もあり、子猫は町から姿を消していく運命にあるようだ。
 この句はミャンマーの仔猫を詠んでいる。痩せた仔猫が観光客の足元にすり寄ってくるのだから、哀れな風景、と見ることもできよう。一方、日本では部屋に閉じ込められたまま恋の季節をやり過ごし、子供を作らずに一生を終える猫が多いようである。どちらの猫が幸福なのだろうか。(恂)

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