耕せば陽と混じり合ふ土温し     直井 正

耕せば陽と混じり合ふ土温し     直井 正

『季のことば』

 中国の内陸部、黄土高原の端にあたる都市でしばらく過ごした時、花壇を耕す作業を見ていたことがある。大学の花壇だからかなり広い。作業員が何人も来て、鋤などで掘り起こすのだが、地面に水分はなく、ポクポクとした感じである。耕して細かくなった土を均すと砂漠を思わす状態になった。
 それからホースで水道の水を入れるのだが、何と半日も放水を続けるのだ。花壇はいくらでも水を吸い込んでいき、「一か月くらい水はやらなくてもOK」だと、作業員は言っていた。本当にその通りで、地表が砂漠状になっても半年以上、オキザリス系のピンクの花が咲き続けていた。
 前句とこの句を見て「日本の“耕”だ」と思った。適当な陽光と水分を含んだ土がある。土を耕すという手応えがあり、たちまち耕土に相応しい状態になっていく。世界の中で「耕すと土が陽と混じり合う」という感覚を得られる地域は、少ないのではないだろうか。日本には豊かな天地の恵みがある。(恂)

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