次々と柵越す馬や風光る   須藤 光迷

次々と柵越す馬や風光る   須藤 光迷

『この一句』

 「広々とした牧場にたくさんの馬がいて、次々に柵を跳び越えて走って行く。輝くような馬の動きが目に浮かぶ」といったような感想とともに、この句は句会で一番人気になった。
 それを聞いていて、人間の思い込みというモノは、つくづくおかしなものだなと思った。ともすれば「ありそうな景色」を思い浮かべ、それをあたかも昔どこかで実際に見た風景として、録画再生のように頭の中に映し出す。そうすることによって、その風景は最早確固たる実景として脳裡に焼き付けられてしまうのだ。
 しかし、放牧されている馬は、異常や異変もないのに、自らの意志で柵を跳び越えることなどあり得ないのである。何かに追われたり、背中に乗った騎手が合図でもしない限り、馬はわざわざ障害物を跳び越えたりはしない。
 作者によるとこれは世田谷・馬事公苑での馬術の訓練風景だという。さもありなん。高得点は選者の勝手な思い込みによるご愛敬だったが、それを差っ引いても、なお余りある「風光る」の雰囲気をよく伝えてくれる句である。(水)

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