胃と生きて今年も初日拝みけり       澤井 二堂

胃と生きて今年も初日拝みけり       澤井 二堂

『この一句』

 内臓関係の重い病気を患った人なら、「胃と生きて」という語が切実に響くのではないだろうか。心臓、肺、胃などを手術したとしよう。一歩間違えれば命を失う危機と隣合わせていたのだった。そう気付くと、他の内臓のことは忘れ去り、病んでいる内臓だけが気掛かりになってくるものだ。
 私(筆者)の場合、かつて心臓の軽い手術をした。すると退院した日から、心臓の調子によって、生活のすべてが回っていくようになった。今日は発作がなかった、血圧は正常だった、不整脈はどうだったか、と。それによって仕事の量、就寝や起床の時間までが定まっていくようになる。
 句の作者は何年か前に胃を手術した。以来、胃のことが常に念頭にある。新年を迎えれば、胃とともに生きる新たな一年が始まっていく。初日を拝んで、思うのはまず胃袋のことだ。手のひらでポンと腹を叩くと、胃が「好調」と応えるではないか。回復した臓器こそ、最も愛しい我が身なのである。(恂)

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