過ぎし日や石鎚山の北おろし   三好 六甫

過ぎし日や石鎚山の北おろし   三好 六甫

『この一句』

 四国の屋根とも言われる愛媛県西条市の石鎚山。標高1982メートルと数字だけでは大したことの無い山のように思えるが、どうしてどうして大変な山のようである。西日本の最高峰でもある。
 今でこそかなりの高みまでケーブルカーで行けるが、その昔は修験道の荒行の場であり、登るのが非常に難しい山であった。頂上の天狗岳をはじめ、いくつもの峰が連なり、太平洋から吹き寄せる雲をまとい、神秘的なたたずまいで、役行者や空海が修業したと伝えられる山岳信仰の山であった。
 作者は幼い頃からこの山を仰ぎ見ながら育った。生まれ育ちは宇和島で高校は松山。大学以降は東京に出て故郷は遥か遠くになりはしたが、とにかくこの人にとって山と言えば石鎚山なのである。喜びも悲しみも、希望も落胆もすべてをこの山にぶつけて来た。
 温暖な四国にも冬はやって来る。久し振りに故郷に帰って、石鎚から吹き下ろして来る風に吹かれると、来し方の思い出ががどっと渦巻くのである。(水)

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