北風(きた)激し初めての名の魚食ふ     高瀬 大虫

北風(きた)激し初めての名の魚食ふ       高瀬 大虫

『この一句』

 「北風」と「初めての名の魚」。合評会では、この取り合わせがいい、という声が相次いだ。では、なぜいいのか。その答えはけっこう難しい。日本人の季節感、食生活、南北に長く海に囲まれた国土の形、それに偏西風、寒波という地球的規模の自然現象までが絡んでいるからである。
 場所はどこだろう。例えば小樽、秋田、新潟、富山、金沢――。太平洋側でも内陸部でも悪くないのだが、やはり北風がびゅうびゅう吹きつける日本海側が似合っている。人それぞれに自分の記憶にある都市や港町などを思い浮かべながら、この句の魚は何だろう、と考えるのではないだろうか。
 魚の名は「ゲンゲンボウ」だそうである。調べてみたら、正式名は「ノロゲンゲ」。シロゲンゲ、クロゲンゲ、ゲンギョ、ドギ、スガヨ、ミズウオなどの名もあるという。大きさは、肉質は、味は、食べ方は。一つだけ答えを言おう。味噌汁や鍋物に合うという。やはり北風の吹く頃が旬の魚なのだ。(恂)

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