秩父野の巡礼憩ふ草紅葉   藤野 十三妹

秩父野の巡礼憩ふ草紅葉   藤野 十三妹

「この一句」

 巡礼というと四国八十八箇所を回る遍路が代表的だが、秩父三十三所観音霊場巡りも江戸時代から盛んに行われてきた。東京から近いこともあって、近ごろは若い人たちのハイキングがてらや、バスで早回りというのも盛んなようである。
 これはどうやら昔ながらの信仰心厚い本格的な巡礼のようである。「草紅葉」という季語と相俟って、いかにも秩父という土地の静かな秋の雰囲気を醸し出している。しみじみとした感じが伝わって来る句である。
 ただ「秩父野」という、恐らくこの作者の造語なのだろが、これが少々ひっかかる。それぞれの地名が持つイメージの問題なのだが、秩父と聞けば誰しも深い山と谷と、激しい流れの川を思い描く。野原ももちろんあるけれど「秩父野」と言われると、知らない人は広大な野原を想像してしまう。やや型にはまった感じになるかも知れないが、ここは「秩父路や巡礼憩ふ草紅葉」と静かに素直に納めておくのがいいかなと思う。(水)

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