交差点他人の空似秋の空         大熊 万歩

交差点他人の空似秋の空         大熊 万歩

『この一句』

 交差点は現代のミニ関所である。お上の定めた、赤は「止まれ」、青は「行け」に従って人は行動しなければならない。待っている時、周囲を見回すと大体、見知らぬ人ばかりだが、たまには知人に出会うこともある。信号が変われば、誰もかれもばらばらに別れ、てんでに散って行く。
 「これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関」。平安時代の歌人・蝉丸は「これがあの有名な逢坂の関なのだなぁ」と詠嘆した。行く人も帰る人も、知る人も知らぬ人も、会っては別れて行く――。上掲の句を見た時、百人一首中、最も有名かもしれないこの一首が浮かんできた。
 作者は交差点で、亡くなった友人に似た人を見かけて、ハッとしたという。よく見れば別人だと分かったが、心は波立っていただろう。信号が変わってからも、その人の背を見送っていたのではないか。友人と作者はどこかで出会い、別れていた。この世もまた交差点。見上げれば、澄んだ秋の空。(恂)

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