なきながら壁にぶつかる秋の蝉   嵐田 啓明

なきながら壁にぶつかる秋の蝉   嵐田 啓明

『合評会から』(日経俳句会)

臣弘 七年土の中にいて、七日で最期を遂げるという蝉の一生をよく表している。我々の一生にも通じるような、深く取ればいくらでも深く取れる句だ。
博明 実際に見た風景なんでしょう。そうだなあと。最後はこうなんだ、と。
綾子 秋の蝉らしさが出ています。
ヲブラダ 「なきながら」とひらがなにしたところが、蝉の心情を投影させてよかったなと思う。
         *   *   *
 作者はこの光景を「今年やたらに多く見た」そうである。「こういうことは人の世にもあるよなあ」と思う。激突して一巻の終わりになってしまう不運な人もあれば、それをばねに奮闘努力、成功への道に乗る人もいる。大多数はぶつかって拵えた傷を癒しながら泣き寝入り・・・。
 でも、そんなことを教訓めかして言ったりせず、ただただ秋の蝉の生態を写したのがこの句のいいところだ。却って何ものかを訴える力が湧いてきた。(水)

この記事へのコメント