足元に谷中の風や猫じゃらし       沢井 二堂

足元に谷中の風や猫じゃらし       沢井 二堂

『この一句』

 作者は住まいのある谷中を散歩中、ふと立ち止まったのだろう。ねこじゃらし(えのころぐさ)が揺れていた。足元に風を感じたのは丈の短いズボンを履いていたからかも知れない。「足元に――風」という表現はなかなか魅力的で、この語によって、ねこじゃらしの揺れがはっきりと見えてくる。
 全く個人的な記憶・印象によるものだが、ねこじゃらしは近年、町中の草になったような気がする。かつてこの草は野原を本拠にしていた。都会の周辺に空き地がなくなって、生存の場を住宅地に求めたのだろうか。生垣の下などはもちろん、アスファルトの割れ目からさえ生えてくるのだ。
 原っぱには丈の高い草がたくさん生えていた。住宅地では高い草が少ないせいか、ねこじゃらしがよく目立つ。ほう、こんな所に、と見やれば、ゆらゆらと風に揺れている。あの膨らんだ穂と細い茎からして、そよ風にも揺れるはずだ。この句によって、ねこじゃらしの新たな一面を見た思いである。(恂)

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