空っぽの大桟橋や鰯雲   廣上 正市

空っぽの大桟橋や鰯雲   廣上 正市

『この一句』

 鰯雲の秋空を見るのにいい場所はあちこちにあるだろうが、横浜港の大桟橋、通称メリケン波止場ほど素晴らしい所はそうそう無いだろう。もっともここは真夏の入道雲を眺めるにもうってつけの場所でもある。
 大改造してからもう一〇年以上たつだろうか。昔は細長くて平らな、大型ではあるがごく普通の埠頭だった。それがデッキを蔽う広大な屋根が、曲線を描いた板張りのテラスに変身、「鯨の背」というニックネームがついてハマっ子や観光客の憩いの場所になっている。てっぺんには芝生の広場があり、ベンチがある。ここに座って、秋風に吹かれながら鰯雲を仰いでいると、鬱陶しい気分などいっぺんに晴れ上がる。
 それなのに、ここは意外に人出が少ない。近ごろ客船の入港が極端に減ったからだ。日本の港の停泊料が高い上に、豪華客船の超大型化でベイブリッジをくぐれない船が増えて来たからだという。空っぽの大桟橋はいよいよ広さが目立ち、秋風が淋しさをかき立てる。(水)

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