高み往くオオムラサキや夏深し       堤 てる夫

高み往くオオムラサキや夏深し       堤 てる夫

『この一句』

 この句を見た瞬間、「あぁ、夏深しだ」と感じた。昔、そんな光景を見た記憶があった。高い梢の上を確かに蝶が飛んでいたのである。記憶がだんだん広がって行く。あれは家の近くの歯医者さんの家の、確かケヤキの木であった。毎年、何度も見ていた。いつも、夏休みの終わりの頃だったような気がする。
 日本の国蝶・オオムラサキなどには「縄張り飛翔」というのがあるという。事典類によれば、春の終わりから初夏にかけて生まれた蝶が晩夏に縄張りを作り、次世代を産むための行動である。高く飛び回るのはもちろんオスで、メスはそんなオスの姿を見つけ、追いかけてくるのだろう。
 インターネットで得た情報も紹介しよう。「時間的には午後に行われることが多く、西日を浴びて高い樹冠を活発に飛び回る」「近くに居る時にはその羽音が聞こえる程、鳥の様に力強くはばたき、雄大に滑空する」。六十年も前の「虫好き少年」の心が久々に蘇えってきた。(恂)

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