新宿の路地よりぬっと夏の月      大倉 悌志郎

新宿の路地よりぬっと夏の月      大倉 悌志郎

『合評会から』(日経合同俳句会)

綾子 「ぬっと」というのが夏の月らしいですね。
冷峰 新宿の路地は二丁目にいくつか残っているくらいだが、銀座や池袋にはない雰囲気がある。その路地に月が「ぬっと」出てきた。気に入りましたね、この句は。
明男 どこでも見られるような光景かも知れませんが、あの新宿の路地だからいいんです。私はこの句から、ひときわの静寂を感じました。
柏人 率直かつ骨太な句で、今回、一番気に入ったが、「より」とあるのが残念だ。ここは「から」でなくてはならない。廃屋のお化けが出てきたときは、「廃屋から」に決まっているではないか。
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 路地のイメージはさまざまである。細い路、寂しい路、賑やかな路、怖い路、変な臭いの漂う路――。作者の自宅は新宿区にあるから、商業地に近い住宅地の路地を詠んだのかも知れないが、気にすることはない。俳句というものは発表したとたん、読み手のものになってしまうのだ。(恂)

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