暑き町遠見の木々の揺らぐかな   水口 弥生

暑き町遠見の木々の揺らぐかな   水口 弥生

『季のことば』

 「暑し」は夏の季語と言ったら、「バカじゃないの」と笑われるかも知れない。当たり前のことを今更のように言うのは愚の骨頂である。しかし、俳句が俳諧とか発句とか言われた江戸時代から「暑し」(暑さ、暑苦し、暑、暑気、暑熱)は夏場を通して盛んに詠まれた大きな季語で、これは現代俳句でも変わらない。
 「寒し」という冬の季語に相対するものだが、寒い方は重ね着などでなんとかなるにしても、暑さの方はどうにもしようがない。今でこそエアコンという有難い装置で暑さをしのげるが、昔、と言っても昭和40年代までは大変だった。熱中症という言葉は無かったが、「暑さ当たり」で参ってしまう人が続出した。
 この句はちょっと思いつかないような風景を示して、「暑し」をうまく詠んだ。おそらく盆地か谷間の町で暑さがこもってしまう地形なのだろう。遠くに見える木立や並木が揺らいでいる景色を詠んでいる。これは急激な日射で熱せられた空気が立ち上ることによって生じる揺らぎで、春の季語の陽炎や蜃気楼と同じような現象を激しくしたものであろう。(水)

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