白魚の魚籠に影なき泳ぎかな         岡本 祟

白魚の魚籠に影なき泳ぎかな         岡本 祟

『この一句』

 前回のコメントにあるように「シラウオ」と「シロウオ」は混同されやすい。魚種は全く別で、魚類図鑑で見ると形もけっこう違っているのだ。しかしどちらも春になると産卵のために海から川へ上る小魚で、半透明で、しかも美味しい。「同じようなものじゃないか」と割り切って、句を作る人もいる。
 この句は「白魚」だから、もちろん「シラウオ」。一般に流通するのは、刺し網などの大量捕獲物がほとんどのようだが、こちらは川べりなどに四手網を仕掛けるこじんまりした漁法だろう。作者は水に半ば沈めた魚籠(びく)を覗き込み、「どうですか、採れましたか」などと漁の人に話しかけているのだ。
 魚籠の中には何かが動いていて、光がゆらめいているのに、魚の影は見えない。「白魚やさながらうごく水の色」(小西来山)をふと思う。白魚の透き通るような姿を詠んだ句は古来、多いのだが、魚籠の中の様子は珍しい。細かな竹籠の目を通して、魚籠の内側に光が届いているのだろう。(恂)

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