地虫出づワゴンセールのつかみ取り      岡田 臣弘

地虫出づワゴンセールのつかみ取り      岡田 臣弘

『季のことば』

 「地虫穴を出(い)ず」のような季語を使い出すと、俳句の世界にかなり踏み込んだ、という気持ちになるらしい。「蛇穴を出ず」「蜥蜴(とかげ)穴を出づ」なども、もちろん同様である。「春風」「花見」のような語と違って、普通の人だと「?」と頭を傾げてしまうような世界だからだろう。
 しかし「啓蟄(けいちつ」はどうか。これだと気象予報士が教えてくれるので、「ああ、あれね」とうなずくことになる。この語は「地中の虫(蟄)が穴を啓(ひら)いて出てくること」だから、「地虫穴を出ず」と同じこと。そうと分かれば、難しい季語だ、としり込みすることもない。
 それにしても「ワゴンセールのつかみ取り」とは、力に溢れた形容だ。冬物一掃のセールだろうか。この時期のおばさんパワーの盛り上がりは、まさに啓蟄。ただし作者は、女性だけを地虫になぞらえているのではない。地虫の一匹として、異性の発散するエネルギーを、まぶしげに見ているのである。(恂)

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