ピアノでも弾いてみようかクロッカス    横井定利

ピアノでも弾いてみようかクロッカス     横井定利

『この一句』

 早春の花、藍、紫、黄、白など色とりどりの花、丈夫な花、水栽培もOKの花。クロッカスにはさまざまなイメージがあって、俳句にするには結構、難しい。取合わせ(配合)の句の場合、常に「付き過ぎ」「離れ過ぎ」に悩まされるが、この句はピアノを配して感じのいい距離感を作り出した。
 ギター、フルート、ハープなど、クロッカスに似合いそうな楽器は他にもあるだろう。しかしピアノに勝るとは思えないし、それに何より「弾いてみようか」と口語風にしたのが成功の基。窓辺の鉢植えの雰囲気も感じられ、軽妙な作風を得意とする作者の本領を発揮した一句と言えるだろう。
 この日の句会では、同じ作者の「ガンだつたんよのほほんと春ショール」の句も評判になった。命を脅かされる病をあっさりと詠み、快癒を思わせる。友人の電話の言葉をそのまま用い、街頭での立ち話のような風景に仕上げている。「クロッカス」より、こちらを高く評価する人も、もちろんいた。(恂)

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